2025年7月より、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(読書バリアフリー基本計画) 第二期」に示されている「特定書籍・特定電子書籍等の製作支援」のための実証実験をはじめます。
ABSCは、この実証実験の遂行にあたり、特定書籍・特定電子書籍製作者と出版者との窓口となります。
特定書籍・特定電子書籍とは、著作権法第37条の規定により著作権者に許諾を得ることなく製作される、障害者の利用を可能にするアクセシブルな書籍または電子書籍のことです。点字図書、DAISYなどがこれに当たります。
これまで、特定(電子)書籍製作者は紙書籍を購入して実質的に手作業で対応してきましたが、第二期基本計画では、視覚障害者等の様々なニーズに適切に対応する製作環境を整備するため、国が主導し、実証調査等を通じて出版者から製作者に対して安心して電子データ(PDFやEPUB、テキストデータほか)を提供してもらい、製作作業の効率化、迅速化を図るための具体的な方法を検討していくことが盛り込まれています。
実証実験は、この第二期計画に則るもので、文部科学省・厚生労働省・経済産業省が連携し、2025年度から段階的に進めていく予定です。
2025年の実証実験の概要は以下の通りです。
全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)
公立図書館(5館)程度
全視情協は厚生労働省から依頼書に記載された「遵守事項」に、公立図書館は文部科学省からの依頼書に記載された「遵守事項」に、それぞれ同意したうえで参加してもらっています。
2025年7月~12月(予定)
利用者によるリクエスト→実証実験参加館→ABSC→各出版者
実証実験参加館は、利用者からリクエストされた書籍が、以下の3点に該当しない場合に限りABSC宛にデータ提供依頼を行います。
①「Books」上で、当該出版物がTTS対応の電子書籍やオーディオブックの配信が確認できる
②電子図書館サービスを導入している館の場合、当該出版物の電子版が利用可能である
③国立国会図書館の「デジタル化資料の全文テキストデータの視覚障害者等への提供」がなされている
ただし、障害の度合いによって、点字やマルチメディアDAISY等、特別の形式による特定(電子)書籍が必要な場合にはデータ提供を依頼することとしています。
4-1.ABSCからデータ提供の打診を受けた出版者は、5営業日以内にデータ提供の可否についてABSCに回答をお願いします。
提供可であっても、提供に時間がかかる場合や、何か事情のある場合もその旨ご連絡をお願いします。
なお、「5営業日以内」というのはあくまでも回答期限です。データ提供は早いに越したことはありませんが、「5日営業日以内にデータがほしい」という意味ではありません。
4-2.データ提供方法
①出版者が指定する方法で依頼元の図書館に直接送る
②ABSCが用意したクラウドシステムを使って送る
5-1.電子データの提供を受けた図書館は、それを利用して特定(電子)書籍を製作し、利用を希望する障害者に貸し出します(個人利用者から依頼を受けて製作した場合は、利用者個人に特定(電子)書籍を渡す)。
出版者から提供を受けたデータが、そのまま利用者に提供されることはありません。特定(電子)書籍製作者は、特定(電子)書籍製作後、責任をもって出版者のデータを破棄します。
5-2.製作された特定(電子)書籍は、当該図書館のほか、みなサーチ(国立国会図書館障害者用資料検索サービス)やサピエ図書館(全国視覚障害者情報提供施設協会が運営する、点字図書や録音図書などの全国最大の書誌データベース)に情報提供して、製作済みの特定(電子)書籍が貸出可能であることを共有します。これにより、当該出版物がその後の障害者からの利用の要望に応えられるようになり、出版者の軽減負担にもつながるものと考えます。
初年度に当たる2025年度(令和7年度)は、出版者からデータ提供をする際に障壁となるものは何かを明らかにする「課題抽出」を第一義としています。
データの提供は必須ではありませんが、提供できない理由は明らかにしてくださるようお願いいたします。
実証実験では、各出版者のABSC窓口担当の方宛てにご連絡をさせていただきますので、まだ登録をされていない出版者はこちらよりご登録をお願いします。
Q:データの提供は義務ですか?
A:義務ではありませんが、2024年4月の改正障害者差別解消法では事業者に対する合理的配慮が義務化されています。提出ができない場合は、お手数でもその理由をお知らせくださるようお願いいたします。
Q:5営業日以内にデータを出さないとだめですか?
A:いいえ。回答期限は、あくまでも一次回答の期限です。提供可でも、提供否でも、提供までに時間がかかる場合でも、まずはご連絡をお願いします。
特定(電子)書籍製作者は、提供否の場合は、従来の方法で紙書籍からの製作に着手することになります。また、時間がかかる場合にデータの提供を待つのか、それともデータ提供を待たずに製作を進めるのかは、利用者が急いでいるかどうか等にもよりますので、ABSC経由で確認し、出版者に連絡します。
Q:テキストデータでないとだめですか?
A:EPUB(リフロー)、PDF(テキスト付)、ワードもお受けしております。それ以外でも「この形式なら出せます」という場合は、ABSCにご相談ください。依頼元に確認します。ただし、InDesignは受け付けておりませんので、ご了承ください。
Q:提供したデータはどのように使われるのですか?
A:点字・点字データやテキストDAISY、マルチメディアDAIYなどの視覚障害者等特定書籍・特定電子書籍の製作で使わせていただきます。そのまま利用者にお渡しすることはありません。
製作した特定(電子)書籍は、図書館で視覚障害者等に限定して利用してもらいます。依頼元の図書館だけでなく、みなサーチやサピエ図書館への情報提供をおこない、それら経由でも利用できるようにします。したがって上記の情報提供後には、同じ作品に何度もリクエストがくることは、基本的にはありません。
Q:データの流出が心配です。
A:実証実験中は参加館が限られており、参加に当たっては、全視情協は厚生労働省からの依頼書に記載された「遵守事項」に、公立図書館は文部科学省からの依頼書に記載された「遵守事項」に、それぞれ同意したうえで参加してもらっています。使用期間が終われば、データを破棄していただく旨を約束してもらっています。それでもご不安な場合はABSCにご相談ください。
Q:データを預けている印刷所の対応が有償になる場合、代金は払ってもらえますか?
A:申し訳ありませんが、データ提供にかかる費用の補償はありません。課題の一つと考えており、この場合は「費用が捻出できない」ことを理由として、提供ができない旨ご連絡をくだるようお願いいたします。
Q:TTS対応可のEPUBリフローの電子書籍として販売しているのに、なぜデータ提供の依頼がくるのですか?
A:障害の度合いや利用目的によって(学習目的・研究目的など)、利用者の希望等を満たすためのアクセシビリティに不足している場合は、点字やマルチメディアDAISYなど別の形式での製作が必要になるからです。