アクセシブル・ブックスとは、紙の本のままでは読めない・読みづらい方々にも読めるよう配慮した本の形態の総称です。バリアフリー本ともいいます。
アクセシブル・ブックスの種類
おもに触覚を活用する本
- 点字図書
- 点字に翻訳(点訳)された本や点字で出版(製版・印刷)された本。
- 点訳絵本・点字つきさわる絵本
- 文章や絵に透明の点字シートを貼った手作りの絵本。この点訳絵本をボランティアとともに長年作っていた岩田美津子さんが、2002年に出版社に呼びかけ、「点字つき絵本の出版と普及を考える会」が発足し、多くの出版社から出るようになった。
- 布の絵本
- 素材に布やフェルト、紐、スナップ、マジックテープ、ボタンなどを使い、外す、はめる、ひっぱる、合わせる、ほどく、結ぶなど、手を動かしながら話を楽しむことができる。手ざわりが優しく、耐久性があるので、図書館で重宝されている。1975年ごろ、北海道のふきのとう文庫が制作をはじめ、その後、全国でボランティア活動が広がった。
- さわる絵本
- 布や皮、毛糸などの素材を使って製作された、さわって読む絵本。元の絵本を参考にボランティアの方たちが作る本も多い。
- テルミ
- 手で見る学習絵本雑誌。1983年からと歴史が古く、2カ月に1回発行。定価400円。さわって分かるように発泡印刷という熱で膨らむ特別なインクが使われている。
テルミ 世界で唯一の手で見る学習絵本 公式サイト
おもに聴覚を活用する本
- 音訳図書(録音図書)
- あらゆるジャンルの本を音訳し、単に文章を読み上げるだけでなく、図表やイラスト、写真なども聴いて分かるように説明を加えた録音図書。かつてはカセットテープが主だったが、こんにちでは音声デイジーという形式で録音され、CDで貸し出されるほか、インターネット上の「サピエ図書館」でも配されている。
- オーディオブック
- 通常の本や落語、講演などが基本で、ドラマCDも含むが音楽は含まない。プロの声優が感情豊かに読み上げたものも多い。
おもに視覚を活用する本
- 拡大写本
- 文字サイズを大きくしたり、文字の書体やレイアウトを読みやすくしている。かつては手書きが主だったが、今はおもにパソコンで作られている。
- 大活字本・大きな文字の本
- 複数の出版者から発行されている。講談社は2009年から「大きな文字の青い鳥文庫」を発行しているが、底本の文字サイズを10ポイントから22ポイントと大きくし、書体もゴシック体にした。
- 手話DVD
- 出演者が手で話をする映像作品。声で読むバージョンや、字幕の入ったものもある。
わかりやすさをめざした本
- LLブック(エルエルブック)
- 1960年代にスウェーデンで始まった。知的障害や自閉症のある人、あるいは移民の人にもわかりやすい本として考えられた。ピクトグラムやイラスト、写真を使って表現されている。「やさしく読める」という意味のレットラスト(LättLäst)というスウェーデン語のつづりのLとLをとってLLと呼ばれる。
デジタルの特性をいかした本やアプリ
- マルチメディアDASIY図書
- 読み書き障害のある読者のために文字や画像と音声を同期した図書で、文字サイズや書体を変更したり、縦組みを横組みに変えたり、文字の色や背景色を変えられる。「サピエ図書館」に登録されているほか、伊藤忠記念財団が2011年から製作をはじめた「わいわい文庫」などがある。
- 多言語電子絵本
- マルチメディアDAISY形式で、一冊の絵本が多言語の電子絵本になっている。日本語と外国語のバイリンガルで楽しめる。国を超えて移動する子どもが母語を忘れないように、日本語で育つ子どもが外国語に関心をもつようにと願って、「多言語絵本の会RAINBOW」が2009年から制作している。一部の作品はオンデマンド出版されている。
- 電子書籍
- 図表や写真・イラストなど視覚でしか表現されていない、文字以外の情報も、音声で読み上げられるように、著者や編集者によってあらかじめ説明をテキストで加える動きが始まっている。EPUBなど専用ビューアーが必要。
- 読書支援アプリ
- スマートフォンやタブレット端末で読めるようにするアプリやソフトウェアが多く出てきた。本の表紙やページをスマホのカメラで撮影し、それを読み上げるアプリなどもあり、読み上げ速度を変えたり、読み上げの声も男性の声や女性の声に変えられるなど、ざまざまな機能がある。
公益財団法人 文字・活字文化推進機構では、バリアフリー図書について分かりやすく解説した小冊子「バリアフリー図書の森へようこそ!」を無料で配布しています。ご活用ください。
https://www.mojikatsuji.or.jp/news/2024/04/02/8389/
YouTubeチャンネルでは「バリアフリー図書紹介動画」も公開中です。
https://www.youtube.com/watch?v=cLdxAiBfbXM
出版社の対応事例
読書バリアフリー法には賛同するものの、どう対応していいかわからない、という出版社の方も多いと思います。
ここでは、すでにアクセシブル・ブックスに対応してきた出版社の工夫を紹介しますが、必ずしもすべての出版社、すべての出版物にあてはめられるわけではありません。
まずはできることからはじめませんか?
アクセシブル・ブックスの製作の現場
点字や音読図書、DAISYといったアクセシブル・ブックスは、ボランティアの手によって製作されてきました。
また、そうしたアクセシブル・ブックスをより多くの人に届けるために、さまざまな仕組みが作られてきました。
アクセシブル・ブックスに長く関わっている知られざる現場をレポートします。
- 『世界』の音訳を通してみえてくる読書バリアフリー実現への現状と課題
岩波書店「世界」の音訳
- 点字資料ができるまでの様子を見学させてもらいました
点訳の実際 ─桜雲会・製作の現場から─
- DAISYとはDigital Accessible Information Systemの略で、読書に障害がある人々のために開発されたアクセシブルな電子出版の世界標準の規格です
DAISYコンソーシアム
- 出版や本に関わる皆さんと、視覚障害者等への情報提供を担っている施設団体がお互いに補い合っていけば、必ず変えられると信じています
サピエ図書館
- ロービジョン(全盲ではないけれど、さまざまな「見えにくさ」を感じている人たち)や、学習障害・肢体不自由・知的障害などにより、読書や情報入手の困難な人たちをサポート
読書工房
- 「聞き入る文化の創造」「目が不自由な人へのバリアフリー」「出版文化の振興」の達成を目指すオーディオブックのリーディングカンパニー
オトバンク